大東京ビンボー生活マニュアルのデラックス版が発売になったのか。上下2冊に凝縮されたんだな。
この漫画を知ったキッカケ、はじめて読んだのは中学時代の友達のウチだったなあ。そのときに数話読んですごいオモシロくって、すぐ本屋行って買って帰ったわ。そん時に買ったのがまだ手元にある。生涯永久保存の俺文庫に認定。(他に俺文庫にはツルモク独身寮がある。)
「マニュアル」なんつって書いてあるもんだからちょっと内容が難しそうに見えないことも無いけど、なんかあんまりマニュアルじゃないよ。いや、むしろ一切マニュアルじゃない。
なんかねえ、設定っつーか、細かいこと全く書いて無いのであくまでも憶測に過ぎない、俺の勝手な味付け含むところでこの漫画を簡潔に説明すると、「東京に住む青年コースケが特に定職に就いてるわけでもなく、本読んだり、映画観たり、散歩したり、カノジョとデートしたり、アレ食ったり、コレ拾ってみたりしながら、ビンボーな毎日のゼイタクな生活を謳歌するお話」なわけなのだよ。ビンボーなのはビンボーなんだけど、その生活がどうにもこうにも憧れちゃうくらいにゼイタクで楽しく、有意義で魅力的なところがこのお話のいいとこなんだな。ほのぼのであり哀愁たっぷりであり。
なんかさあ、「貧乏」って書くとすごい暗くて重くて湿っぽい感じするじゃん。人によって捕らえ方はそれぞれかもしれないけど、少なくともみんなネガティブでマイナスなイメージは少なからずあんじゃネーかなあ。出来ればソコは避けて通りたい!みたいな。
でもねえ、このお話に出てくるのは「ビンボー」生活なんだよなあ。「貧乏」では決して無い。カタカナだし、最後は長音。ポップで気軽な感じなんだよなあ。
その2つに共通点があるとしたら、唯一、「お金があんまり手元に無いよ」ってとこくらいか。それ以外の環境や人間関係、本人の気持ちの部分や時には体が資本的な部分も含めて、徹底的に「豊か」なんだよねえ。そして、その「豊か」の中には、周りをシアワセにするチカラもあるんだよなあ。コレがまた。お話の中でコースケの周りにはこの豊かさのシアワセがいっぱいいっぱいに充満してて、そのシアワセの空気は完全に読んでるこっちにまで流れてくる。
嫌味でもなく押し付けがましくない、ちょっと懐かしい匂いのする包容力のあるシアワセが、この漫画に零れ落ちるほど詰まってます。読み始めて最初はそれがイマイチ分からないかもしれないけど、読み進んでいくうちに間違いなく分かると思うシアワセ。ページをめくり進んでいけば、この匂いがだんだん自分を包んでいくのが分かりますよ。
…どんなお話あったっけなあ、と思って、いくつかストーリーを軽く紹介しようと思ったけど、これ、説明するの難しいな。「お坊さんに英語教えてあげる話」とか「ファーストキッチンのコーヒーはうまい話」とか「小さな音楽隊の話」とか「タバコ屋のタンポポコーヒーの話」とか「牛丼は2度楽しむ話」とか「映画合宿は小津安二郎でフィニッシュですの話」とか「懸垂しすぎて箸持てない話」とか、こうやって書いてもナニがどうビンボーでほんわかでシアワセでゆるやかでやわらかくって楽しいのか伝わらないと思いますので、まあ、興味あったら読んでみてくださいな。
ああ、信販会社のCMじゃねーけど、東京で疲れた生活を送っていると忘れがちで見落としがちな「priceless(プライスレス)」がいっぱい詰まった漫画です。お金が無くたって、優しい気持ちと思いやり、それなりの体力とセンスのいい好奇心があれば、シアワセなんていくらでも見つけられるよ、ってお話。
「シアワセってなんだっけ?なんだっけ?」ってお疲れ気味の時には、「大東京ビンボー生活マニュアル」を是非どうぞ。もしくは「ポン酢しょうゆのある家」でも代用は可能ですが。
いろんなビンボーさんを紹介する人気TV番組の銭金。あの番組に登場する元気で明るくて、前向きで優しい、楽しい毎日を送っているビンボー青年を見るたびに、「あー、このTV番組が昔にやってたら、ゼッタイにコースケも出てたよなー」なんて思ったりします。