筋肉少女帯 / エリーゼのために
マル 2006-05-16 [朴訥音楽評]
大槻ケンヂ率いる筋肉少女帯1992年リリースのアルバムです。馬鹿テクシンセ・ピアノを多用した80年代のエディ在籍時から、橘高・本城の鬼ツインギター化にシフトチェンジし、その円熟期に位置するアルバムです。「サンフランシスコ」「これでいいのだ」「釈迦」などたくさんの名曲がある筋少ですが、アルバムとしてはこの作品が一番いい。
で、このアルバム何がいいかというと、それまでまったくといっていいほど洋邦ミュージックシーンの”旬”とリンクしていなかった筋少にとって、いい意味で「時代性」が強く打ち出されたアルバムだと思うんです。主に本城の趣味だと思うんだけど、このアルバム後からシーケンスをつかったミクスチャー・へヴィーロック系に音がシフトしていく筋少の、前哨戦的な意味合いが感じられるんですね。
その証拠(といっていいのかわからないんですが)にこのアルバム、よくも悪くも元ネタがすぐわかる。
これよりちょっと前に盛り上がっていたミクスチャーの最右翼・リンボーマニアックスばりのファンクビートに「テレビもねぇ、ラジオもねぇ」と吉幾三ばりのリリックが繰り広げる「ソウルコックリさん」、レッチリがスティーヴィー・ワンダーをカバーした「higher ground」の完全コピーなんじゃないかと耳を疑ってしまうほど精巧に出来ている「世界の果て」。「生きてあげようかな」のコーラスがかったアルペジオはXTC「キング・フォー・デイ」かな。「スラッシュ禅門答」にいたっちゃまるでXみたいだ。もちろんオーケンの世界観は深みを増してはいるんだけど、サウンド面で元ネタ丸出し状態で大鉈を振って大改革をおこなっている。久しぶりに聴いたらすがすがしい気分にさせられた。
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