タバコマトリックス

「まだ禁煙続いてンの?」とか不意に言われて、「ああ、俺、昔タバコ吸ってたんだっけ。」なんて思い出した。

去年の7月、ちょうど値上がりするとかのタイミングで、「長年吸ってるこのタバコ。吸わなくなったらどうなんだろう?」っていう好奇心だけでやめた喫煙ももう1年と1ヶ月前の話。

ぶっちゃけたところ、「やめたらどうなんだろう好奇心」の期待虚しく、はっきり言ってタバコやめたからって自覚できるような心身の劇的な変化はなんも無かった、と思う。いや、これから凄い変化があるのかもしれないけど。。まあ、無いだろうな。

劇的では無いけど地味な変化があったことはあった。しかもちょっと俺的には残念な感じの変化なんだけどね。

「タバコをやめると食べものがおいしくなるよ」、ってタバコ吸ってる時によくヒトから言われたんで、やめた後の変化の1つとしてそれなりに楽しみにしてた。「ああ、いつも食べてたものが超豪華料理バリに味わえるなんてなんて幸せな世界だろう。」なんつって。

でも、別にそんなこと無かった。「無かった」ってのは間違いかな。味覚の変化はあったのよ。コレは事実。でも、決して、「いつも食べてたものがさらにおいしくなった。」ということは無いと思う。俺の感じたレベルでの味覚の変化は、

「ウマく無いものが際立ってウマく無くなった。」

ってこと。これねえ、なんかウレシイ変化って位置付けより、俺的にはかなり寂しい変化だったのよねえ。

駅前路地を入ったとこにありそうな、ちょっと小汚い感じの中華料理屋とかよくあるじゃない?ああいうとこの「半ラーメン半チャーハンセット」とかものスゲー大好きだったのね。俺。

油が飛んでる店内。TVには誰も見てないナイター中継。カウンターの脇には3週間も前の週刊誌とかが無造作に置かれてて、お店のヒトといったら、厨房にいるおやっさんだけの中華料理店。とりあえず店内入ったら、「ギョーザと瓶ビール」つーのがお約束のような雰囲気醸し出してるその空気。で、ギョーザで飲んだ後は半ラーメン半チャーハンで締めくくり、胃袋全体で中国四千年の歴史を堪能しつつ最後に一服する瞬間。

コレが最高に好きだったのにタバコやめたらこれが出来なくなっちゃったのよ。いや、最後の一服が出来ないのが「変化」なんじゃなくって、「そういうヌルい中華料理屋の味付けが苦手になってしまった。」っていう変化があったわけなんですわ。この感覚を初めて感じたとき、ちょっとショック通り越して涙出そうになった。

油っぽくってしょっぱいものにすごい敏感になった。これが俺の感じた味覚の変化。とにかく味付けの濃いチャーハンとか、食べられなくなる。いや、タバコ吸ってたときにはこれがおいしく食べられていたというのにちょっと自分で不思議な感覚になってくる。

ウマく無いものがウマく無くなったなら、それはそれでシアワセと感じるヒトも多いと思うし、まあ、それが普通な気もするけど、俺はこの変化はなんか複雑な気分だったなあ。今まで満足してたものに急に満足できなくなった肩透かし感っていうか。

この感覚を感じたときに映画のマトリックスをちょっと思い出した。「無い世界を知ることで有る世界の存在を実感する」ような気分かもしれないなあ。

コメント (2)
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はじめまして、いや~面白いです。まずいものがまずく感じるということ。確かに味覚が鋭くなればまずいものも分かる訳ですものね!

面白かったです。

asako 2004/08/13 #3431
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ほんと、「百害あって一利無し」なんていわれるタバコも、やめたからってなんか得したって実感も無いのもどうかと思いましたね。
それどころか今まで満足してたものに満足できなくなったとか、あんまりいいことがあったように思えないのも「なんだかなー」って感じで。
個人的にはタバコ吸ってたときのあの「時間」とか、仲間同士でいるときに吸うタバコが作る「場」とか、なんか無くなっちゃったらものすごい寂しく感じちゃったんですよねえ。

タバコ自体をヒトに勧められるもんじゃないのはわかってるし、自分もまた吸い出そうとかは思っては無いんですけど、そんな「タバコがあった生活」がタバコをやめて美化されてるのかもしれませんな。
タバコじゃないものでその「時間や場」が作れるもんなんか無いですかねえ。
お酒とか比較的近いとこにあるのかな。

オオカワ 2004/08/13 #3432